これまでは、民法で「禁治産」「準禁治産」の制度がありましたが、画一的・硬直的で利用しにくい、戸籍に記載されるため関係者が抵抗を感じるなどの問題があり、利用は低調でした。
介護保険制度の実施により福祉サービスを必要とする高齢の方等がサービス事業者と対等の立場でサービス提供についての契約を結ぶというように福祉の制度が変わってきています。
このような中で、判断能力が不十分な方にとって、福祉保健サービスの利用や財産管理が適切に行われるための、利用しやすい制度が求められていました。
これまでの制度の問題を改正し、利用しやすい制度になりました。
◆「禁治産」「準禁治産」がそれぞれ「後見」「保佐」に改められるとともに、軽度の精神上の障害により判断能力が不十分な方のため、補助制度が新設されました。
◆本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ契約により代理人を決めておく任意後見制度が新設されました。
◆戸籍への記載が廃止され、成年後見登記制度が新設されました。
◆配偶者後見人制度が廃止され、家庭裁判所が適切な法定後見人職権で選任します。
複数の成年後見人を選任したり、法人を成年後見人にすることが可能とされました。
@「補助」「保佐」「後見」からなる法定後見制度
Aあらかじめ本人が代理人を決めておく任意後見制度
補助・保佐・後見は法定後見制度と呼ばれ、親族などの請求権者(身寄りのない方等は市町村)から法廷後見の開始の審判を申立て家庭裁判所によって適任と思われる援助者が選ばれます。
また、場合によって援助者を監督する監督人が選ばれることもあります。
本人の判断能力が不十分になったときに、本人があらかじめ結んでおいた任意後見契約にしたがって任意後見人が本人を援助する制度です。
家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。
任意後見契約は、定められた様式の公正証書で締結し、後見登録をする必要があります。
委任する契約の内容は本人の希望に応じて設定できます。
<例えば>
預貯金の管理、賃貸借契約の締結、介護サービスの契約、施設の入所契約など
成年後見制度の利用手続を大まかに示すと、次のようになります。
<申立て>
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「法定後見開始の申立て」または「任意後見監督人選任の申立て」をします。
<申立てができる方>
◇本人
◇配偶者
◇四親等以内の親族
◇検察官(法定後見のみ)
◇任意後見人
◇市町村長(法定後見のみ)
<審判手続き>
家庭裁判所の調査官が本人の状況を調査したり、問い合わせを行います。
必要に応じ、家事審判官(裁判官)が直接事情を尋ねます。
本人の判断能力について鑑定が行われることがあります。(別途費用がかかります)
<審判>
申立てについて、家庭裁判所の判断が出されます。
<告知・通知>
審判結果については、本人に告知又は通知され、成年後見人等として選任された方にも告知されます。
(告知から2週間後に審判が確定します)
<成年後見登記>
法務局に登記されます。
審判内容は戸籍には記載されません。
身寄りがない方の法定後見(補助・保佐・後見)の開始の審判の申立てについては、本人が申立てをすることと市町村長が申立てをすることが考えられます。
既に判断能力の不十分な痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者で自らの申立てが困難な場合も制度を利用できるように、法改正で市町村長に申立てが認められました。
横浜市は市長の申立て事務を区長に委任し、区長が申立てを行います。
<市町村長の申立て>
法定後見の開始の審判の申立ては、本人や親族が行うことが基本と考えられますが、次の場合などは市町村長が申立てを行うことができます。
◇申立てをすることができる親族がいない。
◇親族がいるものの、関与を拒否している。
※なお、市町村長が申立てをした場合も、申立て費用は本人の負担になります。
<成年後見人等の選任>
成年後見等は家庭裁判所が職権で選任します。
身寄りがない方についても、本人の諸状況を考慮して適任者を選任します。
<問い合わせ先>
お住まいの地区の社会福祉協議会(あんしんセンター)
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